STEMCELL Technologies HepatiCult HepatiCult Mouse Organoid Medium
- 研究用
HepatiCult™ Organoid Growth Medium (Mouse) は、マウス肝前駆細胞オルガノイドを樹立し維持するための、組成が明確な無血清培地です。これらのオルガノイド、あるいは「ミニ肝臓」は、肝幹細胞および前駆細胞を研究するためのin vitro器官培養系です。
HepatiCult™で培養したオルガノイドは、肝幹細胞および前駆細胞(PROM1、AXIN2、SOX9、CD44)、胆管(KRT19、HNF1b)、ならびに肝細胞(HNF4a、AFP)のマーカー遺伝子を発現する上皮を特徴とします。肝オルガノイドは4〜7日ごとに継代でき、凍結保存が可能で、下流の分化にも利用できます。
HepatiCult™は、Corning® Matrigel®ドームに埋め込まれた、または希釈Matrigel®に懸濁されたマウス肝オルガノイドをいずれも培養することができます。オルガノイドは、便利なin vitroでの肝上皮特徴付けを生理学的関連性のある系で実施することを可能にし、動物使用の必要性も減らします。
製品の特長
HepatiCult Mouse Organoid Growth Medium(OGM)をもちいて、マウス肝前駆細胞のオルガノイドを樹立し維持することができます
- オルガノイドを4~5日で作製できる、便利なin vitro培養系です
- 段階を追ったプロトコールで、肝障害モデルや胆管ハンドピッキング、セルソーティングは不要です
- 2つの構成品からなる簡易な仕様、成分が明確な無血清培地です
- マトリックスドームまたは懸濁液の両方に対応した柔軟な培養方法です
対象のアプリケーション
- 肝幹細胞・胆管上皮細胞の研究
- 肝細胞がん・肝疾患モデルの研究
- 創薬毒性試験
マウス肝オルガノイド作製の流れ
- 解剖したマウスの肝臓組織を細かく切断して、酵素消化バッファー(EDB: Enzymatic Digestion Buffer)で消化します(37℃、2時間)。
- 消化した胆管をペレットにしてマトリゲルに埋め込みます。
【A】 ドーム培養の場合、温めた24ウェルプレート中央に30 μLのMatrigelドームとして播種します。ドームを37℃、10分間凝固させ、750 μLのHepatiCultを加えます。
【B】 懸濁(浮遊)培養の場合、10% Matrigel、90% HepatiCult(冷)に混合し、振盪器で撹拌(80 rpm)しながら37℃まで徐々に温めます。 - 7日後に肝オルガノイド培養が確立されたら、オルガノイドを機械的に破砕して断片化し、任意の密度(平均分割比1:25)で播種して継代します。
データ紹介
マウス肝前駆細胞オルガノイドは、胆管断片、シングルセル、または凍結オルガノイドから開始できます
HepatiCult Mouse OGMで(A)胆管断片(B)シングルセル(C)凍結オルガノイドから開始して得られた肝臓オルガノイド。いずれもMatrigelドームに埋め込んで培養し、初代培養7日目または解凍後の初回継代時(凍結オルガノイド)に画像化しました。
肝オルガノイドは、Matrigelドームまたは希釈Matrigel懸濁液で培養できます
HepatiCult Mouse OGMを用いて(A)Matrigelドームまたは(B)希釈Matrigel懸濁液で培養して得られたマウス胆管断片由来の肝前駆細胞オルガノイド。いずれの培養条件下でも、オルガノイドは4~7日以内に継代できます。
HepatiCult Mouse OGMで培養したオルガノイドは、成熟した肝上皮の典型的な特徴を示します
(A)肝前駆細胞オルガノイドは、肝上皮に典型的な多角形の形態です。
(B)オルガノイドとして培養された肝臓前駆細胞は、成熟肝細胞に共通する特徴の二核性(▼印)を示します。
(C)免疫細胞化学分析では、オルガノイドの外面に沿ってMRP4(膜結合型の一方向流出輸送体)(緑)の局在が見られます。細胞核をDAPI(赤)で対比染色しました。
(D)活発に分裂する前駆細胞集団(Ki67遺伝子発現(赤))が含まれています。核染色をDAPI(青)で対比染色しました。
Matrigelのドームおよび懸濁液で培養した肝臓オルガノイドの遺伝子発現解析
HepatiCult Mouse OGMを用いて、MatrigelドームおよびMatrigel懸濁液で得られた肝臓オルガノイドにおけるマーカー発現をRNA-seqで解析したところ、いずれも肝幹細胞および肝前駆細胞に関連するマーカーを発現していました。また、胆管細胞や肝細胞などの成熟肝細胞型に関連する遺伝子も低レベルに発現していました。各列は、継代1~40回の範囲における生物学的反復を表します。
HepatiCult Mouse OGMで培養したオルガノイドの増殖
HepatiCult Mouse OGMで培養したオルガノイドは、継代を経ても効率よく増殖し、各継代の平均分割比は1:25でした。
肝前駆細胞オルガノイドの分化
HepatiCult Mouse OGM(EM)で培養した肝臓オルガノイドは、分化培地(DM、文献で報告された組成)に切り替えることでより成熟した細胞型へ分化します。DM切り替え後の肝臓オルガノイドは、成熟肝細胞マーカー (A) Hnf4α 、(B) Alb、および胆管マーカー (E) Krt19、(F) Hnf1β の発現が上昇し、肝幹・前駆細胞マーカー (C) Sox9、(D) Axin2 の発現が低下しました。
各マーカーの相対定量(RQ)は、18SおよびTBPハウスキーピング遺伝子との相対値として、HepatiCult Mouse OGMをもちいてMatrigelドームで培養した肝前駆細胞オルガノイドに対し正規化して報告されています。